平日は英語の学校、家では日本語。シンガポールで子育てをしていると、気になる場面が出てきます。
「このままで日本語の読み書きは大丈夫だろうか」「帰国したら授業についていけるだろうか」といった場面です。
この記事では、補習授業校、日本の教科書の無償給与、JOES(海外子女教育振興財団)の通信教育と教育相談、図書館という手段を整理しました。いずれも公的・公式に確認できる手段です。
あわせて、家庭でできることを一般論としてまとめています。
日本人学校とインター校のどちらにするか迷っている段階の方は、先に日本人学校とインター校の選び方・費用比較もあわせて読んでください。
この記事はこんな方に
- 💼働く側(駐在員ご本人)にとって帰任後の子どもの学習に向けて、家庭の方針を話し合える
- 🏡帯同する側(ご家族・パートナー)にとって補習校・教科書・通信教育を、子どもの生活に合わせて組み合わせられる
ざっくり言うと
- 🏫ローカル校・インター校なら日本語補習授業校が中心
- 📚日本の教科書は条件を満たせば無償でもらえる
- 🏠補習校に通わないなら家庭学習の工夫で
選び方の基準:まず「いつ・どこへ帰るか」を決める

日本語の維持といっても、目指すところは家庭によって違います。手段を選ぶ前に、次の3点を家族で話しておくと迷いが減ります。
1. 帰国の時期と、帰国後の進路
次のどれにあたるかで、必要な日本語のレベルが変わります。
- 数年で本帰国して日本の公立校に戻る予定
- 滞在が長くなりそう
- 帰国後も英語で学ぶ環境を考えている
日本の学校に戻ることが前提なら、学年相当の国語(漢字・読解・作文)を意識した手段が合います。
2. 子どもの年齢と今の日本語の状態
未就学〜低学年なら「日本語に楽しく触れる時間」を確保することが課題になる、という考え方があります。
高学年以上なら「教科としての国語や、理科・社会の日本語の用語」に触れることが課題になる、という考え方です。
ただし個人差が大きいので、学年だけで決めつけないようにしてください。
3. 家庭で使える時間と送迎の負担
補習校は土曜の午後で、小学生は保護者等の送迎が必須です(低学年は教室前までの送迎)。インター校の週末の予定や習い事との兼ね合い、家庭学習を見られる大人がいるかどうかも、選択に大きく影響します。
比較表:シンガポールで使える日本語維持の手段
| 手段 | 対象 | 頻度・形式 | 費用 | 場所・アクセス |
|---|---|---|---|---|
| シンガポール日本語補習授業校 | 日本国籍で、平日にローカル校・インター校に通う小1〜中3(入学試験あり) | 毎週土曜の午後、年間約40日。国語中心 | 校納金あり(公式で確認) | シンガポール日本人学校クレメンティ校キャンパス内。MRT(都市鉄道)クレメンティ駅(EW23)/ドーバー駅(EW22) |
| 日本の教科書の無償給与 | 日本国籍・海外滞在1年以上・義務教育年齢など(永住者は対象外) | 出国前にJOESで受領。滞在中は日本人学校での配布や大使館への申請 | 教科書は無償(JOESからの送付は送料・梱包料がかかる) | 日本人学校の配布は小学部クレメンティ校・中学部の事務室 |
| JOESの通信教育 | 海外在住の日本の子ども(0〜6歳・小1〜2は絵本・児童書、小3〜中3は理科・社会) | 絵本・児童書は郵送の配本、理科・社会はインターネット教材 | 有料・地域別設定(公式で確認) | 自宅で受講 |
| JOESの教育相談 | 海外・帰国子女の家庭 | ZOOM等のオンライン、東京ほかでの面談、メール | JOES会員とその家族は無料。それ以外は1年間2回まで10,000円(税別) | オンライン(主に日本時間の平日) |
| 日本人会図書室 | 日本人会の会員 | 約74,000冊(絵本・マンガ・小説など)。1世帯20冊・2週間 | 会費が前提。延滞料は1冊1日$0.30 | 120 Adam Road 2階。毎日10:00〜19:00 |
| NLB(公共図書館) | 図書館の利用者 | OneSearchで蔵書検索、電子書籍はNLBのOverDrive(Libby) | 公式で確認(図書館活用ガイド参照) | 各地の公共図書館・オンライン |
料金・日程は変わることがあります。数字は必ず各リンク先の公式ページで確認してください。
シンガポール日本語補習授業校
どんな学校か
文部科学省は、補習授業校を「平日は現地校等に通う子どもたちが週末に国語を中心に学んで」いる場として紹介しています(文部科学省)。
シンガポールではシンガポール日本語補習授業校があります。
公式サイトでは、平日にローカル校・インターナショナル校に通う日本国籍の小・中学生が、毎週土曜日に国語や日本文化を学ぶ学校と案内されています。
学年は小学1年から中学3年まで。授業は毎週土曜日に3時間、年間40日(前期・後期それぞれ約20日)です。
日本の学習指導要領に沿った国語科の指導に加え、関連する社会科の内容を年間10時間以内で扱うとされています。
出典: 教育課程
授業時間
- 小1〜小4:13:25開始、3時限、16:25終了
- 小5〜中3:13:25開始、3時限、16:25終了(休み時間の配置が小1〜4と異なります)
- 放課後の任意活動:16:30〜17:00
時限ごとの時刻は公式の教育課程ページに掲載されています。
入学の条件と時期
公式の入学許可の基本条件では、次の点などが挙げられています。
- 日本国籍を持ち保護者とともにシンガポールに在留・在住していること
- 日本人学校以外のローカル校・インター校に通っていること
- 希望学年に相当する年齢であること
- 学年の学習についていける日本語力があること
入学試験の結果で入学を判断し、保護者の個別面接もあります。
入学は年度初めの4月と、年度途中の6月・10月です(入学試験の案内)。
確認日時点では、10月編入の出願は9月3日で締め切られています。4月入学の説明会の案内は、12月初旬にサイトで告知予定とされています。
試験範囲や練習用のワークシートも公式サイトで公開されています。
保護者に求められること
補習校は「通わせれば日本語が維持できる」場所ではなく、家庭の協力が前提です。公式の条件では、家庭で日本語を使う環境をつくり、家庭学習を支えることが保護者の義務として明記されています。
授業時数が日本の学校より少ないため、家庭の支えが欠かせないという説明です。
送迎のルールもあります。学年ごとに、次のように求められています。
- 小1:教室まで保護者が付き添う
- 小2:学校まで送り、教室まで迎えに行く
- 小3以上:保護者が送迎
- 中学生:可能な限り保護者が送迎
保護者会の活動や行事の係も分担します。
共働きやヘルパーさんに送迎を頼む予定の家庭は、入学前に公式の条件をよく読んで確認してください。
場所とアクセス
授業はシンガポール日本人学校クレメンティ校のキャンパス内で行われます(アクセス)。クレメンティ校の所在地は95 Clementi Road, Singapore 129782です(日本人学校)。
- MRT:クレメンティ駅(EW23)またはドーバー駅(EW22)
- バス:クレメンティ駅から96番・183番で約10分
- タクシー:クレメンティ駅・ドーバー駅から約5分
校内の駐車は送迎時のみなど、車に関するルールもあります。子連れでの移動方法はMRT・バス・タクシー子連れガイドも参考にしてください。
事務局の電話は+65 6777-5560です。
日本の教科書を無償で受け取る
制度の概要
文部科学省は、海外に住む日本人の子どもに日本の教科書を無償で給与しています。在外公館が対象人数を報告し、文部科学省が教科書を購入して在外公館に送り、在外公館から子どもに渡す仕組みです。
年度途中に出国する場合は、JOESに申し込んで出国前に受け取ります(文部科学省)。
JOESが示す対象は、次の3条件です。
- 日本国籍を持つこと
- 海外に1年以上滞在すること(永住者は除く)
- 日本の義務教育の年齢であること
教科書自体は無償です。ただし、JOESから送付を受ける場合は送料・梱包料がかかります。
赴任前:必ず出国前にJOESで
赴任が決まったら、今の学校で必要な証明書類を受け取り、出国前にJOESで教科書を受け取るのが基本です。
補習校の公式ページでも、出国前にJOESで受け取り、手荷物で持ってくるよう案内されています。
6月・10月の編入時には学校で教科書を配布しないとしています(教科書の入手について)。
赴任準備の段取りは赴任準備チェックリストに入れておくと漏れにくくなります。
シンガポール滞在中:日本人学校での配布と大使館への申請
シンガポール日本人学校の教科書配布ページでは、4月に上巻、9月に下巻を配布すると案内されています。配布場所は、小学部クレメンティ校・中学部の事務室です。
日本国籍であること、子どものパスポートのコピーが必要なことなどが条件です。
通っている学校で対象を限る記載はありません。ただし、条件や配布日は毎回の告知で確認してください。
年度途中に来星した場合の大使館への追加送付申請の方法も、同じページに書かれています。
予備や紛失分を買いたい場合の注文方法は、補習校のページで案内されています。日本国内の教科書供給協会や、シンガポールの紀伊國屋書店での注文方法です。
JOESの通信教育と教育相談

通信教育:未就学〜小2は絵本、小3〜中3は理科・社会
JOESの通信教育は、海外に住む日本の子ども向けのサービスです。
- 幼児コース・児童書コース:0〜6歳と小1〜2が対象。年齢に合わせて選ばれた日本の絵本・児童書を定期的に郵送する配本サービスです。
- 小・中学生 理科・社会コース:小3〜中3が対象。授業動画と学習ノートによるインターネット教材で、10日間の無料体験があります。
受講料は地域区分ごとに設定され、JOES会員には割引があります。申込の締切もコースごとに決まっているため、金額と時期は公式ページで確認してください。
補習校は国語が中心なので、理科・社会の日本語の用語に触れる手段として通信教育を組み合わせる、という考え方もあります。どう組み合わせるかは子どもの負担も見ながら判断してください。
民間の通信教育について
JOESは「おすすめの通信教育・教材の紹介」というページで、海外から受講できる民間の教材を紹介しています(例として、小学館の「名探偵コナンゼミ」、ベネッセの「進研ゼミ小学講座」、「すらら」などが掲載されています)。
当媒体では特定のサービスをすすめません。
申込方法や海外への発送条件は各社で異なります。それぞれの公式サイトで確認してください。
教育相談:迷ったら専門のアドバイザーに
JOESの教育相談では、教育アドバイザーが海外・帰国子女の教育についての相談に応じています。
ZOOMなどのオンライン相談があり、シンガポールからも利用しやすい形式です。
JOESの法人・団体会員とその家族は無料、それ以外は10,000円(税別)で1年間に2回までと案内されています。
相談時間は主に日本時間の平日(シンガポールとの時差は1時間。月1回の土曜枠もあると案内されています)です。予約フォームから申し込みます。
勤務先がJOESの会員かどうかは、会社の人事担当に確認するのが早道です。
本に触れる:日本人会図書室とNLB
日本人会図書室
シンガポール日本人会の図書室には、小説・ビジネス書・マンガ・絵本・英語書籍など約74,000冊があります。貸出は1世帯20冊まで、期間は2週間、新刊や人気本は1世帯3冊までです。
開室時間は毎日10:00〜19:00、場所は120 Adam Roadの2階です。
利用は日本人会の会員向けです。入会方法や会費、そのほかの日本語窓口はシンガポール日本人会の使い方と日本人窓口にまとめています。
NLB(公共図書館)で日本語の本を探す
NLBの蔵書はOneSearchで検索できます。検索結果の絞り込み(Refine search)に「Language」の項目があります。
キーワード検索のあとで言語を絞り込むと、日本語資料を探しやすくなります。在庫の場所は資料ごとに確認してください。
電子書籍・オーディオブックはNLBのOverDrive(Libby)で探せます。確認日時点で言語をJapaneseに絞った検索結果は約50件で、児童向けはごく少数でした。
日本語の本を借りる目的なら、日本人会図書室と組み合わせるのが現実的です。会員登録やアプリの使い方はシンガポールの図書館活用ガイドを参照してください。
家庭でできること(一般論)
ここからは、公式機関が示す特定の方法ではなく、家庭で取り入れやすい例の一般論です。効果は子どもの年齢や性格、家庭の状況によって変わり、どれかを行えば日本語が維持できると保証するものではありません。
- 家庭内の言語ルールを決める:「家では日本語」「夕食のときは日本語」など、家族が続けられる範囲で決めておく。補習校も家庭での日本語環境づくりを保護者に求めています。
- 読み聞かせと音読:未就学〜低学年は読み聞かせ、学年が上がったら教科書の音読など、声に出して読む時間をつくる。
- 書く機会をつくる:日本の祖父母への手紙やメッセージ、短い日記など、相手や目的がある「書く」を取り入れる。
- 教科書を手元に置く:無償給与の教科書は、学年の目安を知る手がかりにもなります。
- 一時帰国を活用する:本屋や図書館で本を選ぶ、日本の子どもと遊ぶなど、日本語を使う場面を増やす。
- 子どもの負担を見る:平日の現地校・インター校の学習とあわせると負担が大きくなることもあります。嫌がる、疲れているといった様子があれば量ややり方を見直す。
帰国後の学校生活を見据えて

帰国後に日本の学校へ戻る場合、国語だけでなく、算数・理科・社会の日本語の用語や、学校生活の習慣に慣れることも課題になりえます。
逆に、帰国後も英語で学ぶ進路を考えるなら、日本語と英語のバランスの取り方が変わってきます。
どちらが正しいということはなく、帰国時期と進路の見通しによって判断が分かれます。
考え方の一例として、次のような順番で整理すると決めやすくなります。
- 帰国予定の時期と、帰国後に通う学校のタイプ(公立・私立・インター・帰国生の受け入れがある学校など)を仮決めする。
- その学校で求められる日本語の力と、今の子どもの状態の差を見る。
- 差を埋める手段として、補習校・教科書・通信教育・家庭学習を組み合わせる。
- 迷うときは、JOESの教育相談など専門の窓口に相談する。
次の記事を参考にしてください。
- 滞在中に日本人学校への転校を検討する場合:日本人学校の編入手続き
- インター校の費用:インター校学費比較2026-27
- 学校選びの全体像:日本人学校とインター校の選び方
帰任の手続きは本帰国手続きチェックリストにまとめています。
よくある質問
インター校に通いながら補習校にも通えますか?
補習校は、平日にローカル校・インター校に通う日本国籍の小・中学生を対象としています。ただし入学試験があり、学年相当の日本語力や、保護者の送迎・家庭学習の協力などの条件があります。
詳しくは公式の入学許可の基本条件で確認してください。
補習校の入学はいつからできますか?
年度初めの4月と、年度途中の6月・10月です。確認日時点で10月編入の出願は締め切られており、4月入学の説明会の案内は12月初旬に公式サイトで告知予定とされています。
最新の日程は公式の入学案内で確認してください。
シンガポールに来てから日本の教科書は手に入りますか?
次の方法などがあります。
- 日本人学校での配布(4月に上巻、9月に下巻)
- 大使館への追加送付の申請
- JOESの「滞在中の教科書申請」
条件はそれぞれ異なります。日本人学校の教科書配布ページとJOESで確認してください。
赴任前であれば、出国前にJOESで受け取るのが確実です。
未就学の子どもは何から始めればいいですか?
公的な選択肢としては、JOESの幼児コース(0〜6歳向けの絵本の配本)や、日本人会図書室の絵本があります。家庭では読み聞かせなど、日本語に楽しく触れる時間をつくることが一つの方法です。
幼稚園・プリスクール選びは幼稚園・プリスクールの選び方を参照してください。
子どもの日本語について誰に相談すればいいですか?
JOESの教育相談では、教育アドバイザーにオンラインで相談できます。勤務先がJOESの会員なら無料、それ以外は有料です。
補習校に通っている場合は、学校にも相談してみてください。発達や言葉の遅れが気になる場合は、医療機関への相談も選択肢です(日本語が通じるクリニック・小児科ガイド)。
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最終確認日: 2026-10-02 / 最新情報は公式ページよりご確認ください。


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