赴任準備で確認しておきたいのが、子どもの予防接種です。
シンガポールでは、長期パスの申請前に予防接種の確認が必要な場合があります。日本のスケジュールとの時期のずれが問題になることもあります。
この記事では、シンガポールの公式情報をもとに、日本との違い、赴任前後の手続き、現地での受け方、記録の管理までを1本にまとめました。
医療に関わる内容なので、お子さんごとの判断は必ず医師にご相談ください。
この記事はこんな方に
- 💼働く側(駐在員ご本人)にとって家族のパス申請に必要な接種記録を、赴任前に準備できる
- 🏡帯同する側(ご家族・パートナー)にとって日本との接種時期の違いと、現地での受け方・記録の残し方がわかる
ざっくり言うと
- 💉シンガポールは国の推奨スケジュール(NCIS)
- 🪪12歳以下の外国籍はDP(帯同家族パス)申請時に接種記録が必要
- 🇯🇵日本との違いを出発前に確認
まず確認したい3つのポイント

シンガポールでの予防接種は、次の3点を押さえると全体像がつかみやすくなります。
1. 基準はNCIS(国の推奨スケジュール)
NCISは、シンガポールで子どもに標準的にすすめられている予防接種の一覧です。CDA(Communicable Diseases Agency、感染症庁)によると、対象は次の14疾患です。
- 結核
- B型肝炎
- ジフテリア
- 破傷風
- 百日せき
- ポリオ
- Hib(ヒブ)
- 麻しん
- おたふくかぜ
- 風しん
- 水痘(水ぼうそう)
- 肺炎球菌
- HPV(ヒトパピローマウイルス)
- インフルエンザ
現在の表は「2026年4月1日更新」版で、出生から17歳までをカバーしています。
出典: CDA:Vaccinations
2. ジフテリアと麻しんは法律上の義務
CDAは、14疾患のうちジフテリアと麻しんの接種は、感染症法(Infectious Diseases Act)に基づき子どもに義務づけられていると説明しています。
具体的な定めは「Infectious Diseases (Diphtheria and Measles Vaccination) Regulations 2021」(2022年1月1日施行)にあります。親または保護者が、決められた時期までに子どもに接種を受けさせることが定められています。
この規則には、海外で生まれてシンガポールに来た子どもについての期限も定められています。
例えばジフテリアの初回接種は、生後6か月以上12歳未満で入国した場合、入国から12か月以内に完了させることとされています。
麻しんも、入国時の年齢に応じた期限の定めがあります。お子さんが該当するかどうかは、条文や医師に確認してください。
3. 外国籍の子どもは長期パス申請の前に「確認」が必要
対象は、12歳以下の外国籍の子どもがDP、LTVP(MOM〔人材開発省〕発行)、学生パス(ICA〔入国管理局〕発行)を初めて申請する場合です。
この場合、2019年2月1日から、ジフテリアと麻しんの接種証明をCDAに提出して確認を受けないと、パスの申請に進めなくなりました。
駐在家族が赴任前に必ず確認したい手続きです。
出典: CDA:Verification of Vaccination Requirements
シンガポールと日本の主な違い(比較表)
シンガポールのNCISと、日本の定期接種の標準的な時期を並べました。どちらも公式資料で確認できた範囲だけを載せています。
日本側は厚生労働省の「定期接種実施要領」とワクチン別ページの「標準的な接種期間」です。実際の接種時期は医師と相談して決まるため、目安として見てください。
| ワクチン | シンガポール(NCIS) | 日本(定期接種の標準的な時期) |
|---|---|---|
| BCG(結核) | 出生時 | 生後5〜8か月 |
| B型肝炎 | 出生時(24時間以内)・2か月・6か月。2回目と3回目は6種混合で | 生後2か月・3か月・7〜8か月 |
| ジフテリア・破傷風・百日せき・ポリオ・Hib(乳幼児期) | 2か月・4か月・6か月、追加は18か月(6種混合・5種混合) | 5種混合:生後2〜7か月に開始して3回、3回目から6〜18か月あけて追加1回 |
| ジフテリアなどの学童期の追加 | 10〜11歳(Tdap-IPV) | 11〜12歳(2種混合・第2期) |
| 小児用肺炎球菌 | 4か月・6か月、追加は12か月(PCV13) | 生後2か月から3回、追加は12〜15か月 |
| 麻しん(はしか) | 12か月(MMR)・15か月(MMRV) | MR第1期:12〜24か月/第2期:小学校就学前の1年間 |
| 水痘(水ぼうそう) | 12か月・15か月 | 1回目12〜15か月、3か月以上(標準6〜12か月)あけて2回目 |
| おたふくかぜ | MMR・MMRVに含まれる | 定期接種の一覧に記載なし |
| ロタウイルス | NCISの対象外 | 初回は生後2か月〜14週6日(生後6週から可) |
| 日本脳炎 | NCISの対象外 | 第1期初回3歳、追加4歳、第2期9歳 |
| HPV | 女子:中学1年(12〜13歳)・中学2年(13〜14歳)の学校接種 | 女子:13歳になる年度(中学1年相当)が標準 |
| インフルエンザ | 生後6か月〜5歳未満の全員に毎年(シーズンごと)推奨 | 子どもの定期接種の一覧に記載なし |
出典:NCIS(2026年4月1日更新、PDF)/厚生労働省:定期接種実施要領(PDF)/厚生労働省:予防接種・ワクチン情報
駐在家族が特に気をつけたい3つのずれ
- 麻しんの2回目:シンガポールは15か月で2回目を接種しますが、日本のMR第2期は就学前の1年間です。CDAのFAQでは、15か月以上の子どもには麻しん2回が必要とされ、「3歳で母国のスケジュールでは1回のみ」というケースでも2回を完了しないと申請は却下されると書かれています。
- ジフテリアの5回目:CDAの要件では10〜12歳は5回(初回3回+追加2回)が必要です。日本の2種混合(第2期)は11〜12歳が標準のため、まだ受けていない年齢のお子さんは不足する可能性があります。
- ジフテリアの4回目:18か月〜10歳未満は4回が必要です。日本の5種混合の追加接種は3回目から6〜18か月あけるため、接種した時期によっては足りないことがあります。
在シンガポール日本国大使館も、日本の標準的なスケジュールで接種した場合は要件を満たさない可能性があるとしています。
そのうえで、母子手帳などで履歴を確認し、追加で必要な接種は渡航医学の専門医に相談するよう案内しています。
赴任前:予防接種要件の確認(VR)の流れ
CDAの案内をもとに、12歳以下の子どもを帯同する場合の流れを整理しました。申請には会社が代わりに行うこともできるとされていますが、CDAは本人(保護者)による申請をすすめています。
年齢別に必要な回数
CDAのFAQでは、申請時点の年齢ごとに必要な回数が次のように示されています。
| 申請時の年齢 | ジフテリア | 麻しん |
|---|---|---|
| 2か月未満 | 0回 | 0回 |
| 2か月〜4か月未満 | 1回 | 0回 |
| 4か月〜6か月未満 | 2回 | 0回 |
| 6か月〜12か月未満 | 3回 | 0回 |
| 12か月〜15か月未満 | 3回 | 1回 |
| 15か月〜18か月未満 | 3回 | 2回 |
| 18か月〜10歳未満 | 4回(初回3回+追加1回) | 2回 |
| 10歳〜12歳 | 5回(初回3回+追加2回) | 2回 |
あわせて、ジフテリアの最少接種年齢は生後6週、麻しんは12か月とされています。12か月より前に受けた麻しんを含むワクチンは回数に数えないとも明記されています。
接種間隔の最短基準も示されています。詳しくはCDAのFAQで確認してください。
申請の4ステップ
- 医師の証明をもらう:CDAのサイトから「Immunisation Registration Form(IRF、予防接種の登録用紙)」をダウンロードし、医師に接種歴を記入・証明してもらいます。2025年5月1日以降、HPB(健康促進庁)のロゴが入った旧様式は受け付けられません。
- 書類をそろえる:子どものパスポート(申請日から6か月以上有効。後のパス申請でも同じものを使う)、出生証明書、保護者のパスポート(6か月以上有効)、医師が証明したIRF、母国での接種記録です。英語以外の書類は、翻訳会社、大使館、公証人のいずれかによる英訳が必要です。
- オンラインで申請:接種歴を入力して書類をアップロードします。申請料はS$35(GST〔消費税にあたる税〕込み、返金なし)で、支払いはVISAかMasterCardのみです。Singpassは不要で、メールアドレスでアカウントを作ります。
- 結果を待つ:書類がそろってから約10営業日で、メールで結果が届きます。
なお、大使館は確認証の発行まで1か月程度、申請が集中する時期は2か月程度かかる場合があると案内しています。パスの申請時期から逆算して、早めに準備を始めるのが安心です。
赴任準備の全体像はシンガポール赴任準備チェックリストにまとめています。
申請でつまずきやすい点
CDAは、よくある却下理由として次のものなどを挙げています。
- 要件を満たす接種がされていない
- IRFに医師の署名や保護者の名前・署名がない
- 義務接種の欄が空欄
- 接種記録や英訳が添付されていない
- 期限内に再提出しなかった
却下の場合も申請料は返金されません。
また、申請後からパスが承認されるまでの間に受けた接種は、NIRのサイトから記録の更新を申請する必要があります。提出した接種記録の原本と英訳、IRFは、監査の対象になることがあるため保管しておくよう求められています。
まだ接種の時期に来ていない乳児も申請は必要です。この場合は確認書が発行され、シンガポールで時期が来たら接種するよう案内されます。
現地での受け方:ポリクリニックとGPクリニック

接種できる場所
シンガポールで子どもの予防接種を受ける場所には、政府系のポリクリニックや、民間のGP(かかりつけ医)クリニックなどがあります。
SingHealthのポリクリニックでは、受診時に子どもの「Health Booklet(健康手帳)」を持参するよう案内しています。接種記録を書き込んでもらうためです。
出典: SingHealth Polyclinics:NCIS
日本語で相談したい場合は、日本語が通じるクリニックや小児科を選ぶ方法もあります。
予防接種の対応状況はクリニックごとに違います。そのため、予約時に「NCISのどのワクチンを扱っているか」「日本の接種歴を踏まえた相談ができるか」を確認しておくとスムーズです。
候補探しには日本語が通じるクリニック・歯科・小児科ガイドをご覧ください。
費用と補助
MOH(保健省)によると、NCISの接種補助の対象はシンガポール国民(SC)と永住者(PR)の子どもです。SCはポリクリニックとCHAS GPクリニックの両方で、PRはポリクリニックで補助を受けられます。
外国籍の子どもは補助の対象として書かれていません。そのため、駐在家族は自己負担を前提に考え、料金は接種先に直接確認してください。
会社の医療保険や福利厚生で費用がカバーされるかどうかも、あわせて確認しておくと安心です。
出典: MOH:Childhood Vaccinations
日本で定期接種になっているワクチンは?
ロタウイルスと日本脳炎はNCISの14疾患に含まれていません。NIRのFAQでも、ロタウイルスはシンガポールでは義務ではないと説明されています。
シンガポール滞在中にこれらを受けるかどうか、どこで受けられるかは、医師やクリニックに相談してください。帰国後に日本の定期接種の対象年齢内で受けられるかどうかは、住む自治体に確認が必要です。
園・学校で求められること
プリスクール(保育園・幼稚園)
ECDA(幼児教育庁)は、プリスクールに入るすべての子ども(現地・外国籍とも)に、MMR少なくとも1回とジフテリアの初回3回の接種を求めています。
MMRの2回目は医師が指定した日に受ける必要があります。接種年齢に達していない乳児は入園できますが、予定どおり接種を受けさせるよう案内されています。
出典: ECDA:ask.gov.sg
MOE Kindergartenの場合は、必要に応じてNIRからダウンロードした公式記録の提出を求められます。Health Bookletの記録は受け付けないと明記されています。
MOEの学校での接種
MOE(教育省)系の学校では、School Health Serviceが学校での接種を行っています。
HealthHubによると、内容は次のとおりです。
- 小学校:MMR、Tdap、ポリオの接種
- 中学校:これらの接種状況の確認
- 中学1・2年の女子:補助付きのHPV接種の案内
出典: HealthHub:Student Immunisation and Screening
NCISでも、10〜11歳・12〜13歳・13〜14歳の接種は、小学5年・中学1年・中学2年の学校接種プログラムで行うと記載されています。
日本人学校・インター校
シンガポール日本人学校の編入学の資格・条件ページと保健関係書類のページを確認しました。予防接種記録の提出についての記載は見当たりませんでした。
インターナショナルスクールは学校ごとに要件が異なります。どちらも、入学・編入の手続き時に学校へ直接確認してください。
学校選びの比較は日本人学校とインター校の選び方・費用比較で紹介しています。
接種記録の管理:NIR・Health Booklet・母子手帳
NIR(National Immunisation Registry)とは
NIRは、シンガポールに住む子どもと大人の予防接種記録を管理する国のデータベースで、CDAが運営しています。
医師はNCISの接種をした後にNIRへ通知することになっています。ジフテリアと麻しんについては、接種から7日以内に通知し、保護者に接種証明書を渡すことが規則で定められています。
子どもは最初の接種を受けたときに自動的にNIRに登録されます。
出典: NIR:FAQ
日本で受けた接種をNIRに登録するには
VR申請で提出した接種歴はCDAが確認し、申請の過程でNIRの参照番号が発行されます。
それとは別に、NIRのサイトには「Update New Vaccination Records」という記録更新の手続きがあります。この手続きには、NRIC(国民・永住者の身分証番号)またはFIN(外国人の識別番号)が必要です。
子どもの記録を更新する場合は、次の書類を用意します。
- 出生証明書
- DPなどのパス
- 両親のNRIC/FIN(表裏)
- 接種記録の原本の写し
英語以外の書類は原本と英訳の両方を提出します。更新されるのは、シンガポールの国の予防接種スケジュールで推奨されている接種だけとされています。
出典: NIR:Update New Vaccination Record
記録の見方と証明書
NIRで子どもの記録を見たり印刷したりするには、Singpassでのログインが必要です。自分が利用対象かどうかはSingpassの公式サイトで確認してください。
すべての接種が終わると医師から接種証明書が発行され、なくした場合は医師に再発行を依頼できると案内されています。入国後の各種手続きはシンガポール入国後にやることも参考にしてください。
母子手帳の活用
日本の母子手帳は、赴任前の接種歴を確認するための基本の資料です。
ワクチン名と接種日が英語でも読める形にしておくと、現地の医師への説明やVR申請の英訳準備がスムーズになります。
ただし、CDAへの提出には翻訳会社・大使館・公証人のいずれかによる英訳が必要とされています。自分で書き込んだ英語だけでは足りない点に注意してください。
現地で受けた接種も母子手帳に記入してもらったり、証明書のコピーを挟んだりしておきましょう。帰国時に日本の記録とまとめて確認できます。
本帰国後の追いつき接種

シンガポールで受けた接種と日本の定期接種は、ワクチンの種類や時期が同じとは限りません。
帰国後にどの接種を受ければよいか、定期接種として受けられるかは、お子さんの年齢や接種歴、住む自治体の扱いによって変わります。
帰国前に、NIRの記録や医師の証明書を英文で用意してください。そのうえで、転入手続きのときに自治体の予防接種の窓口へ相談してください。
帰国時の手続き全体はシンガポール帰任(本帰国)手続きチェックリストにまとめています。
よくある質問
日本で受けた予防接種は、シンガポールでも有効ですか?
ジフテリアと麻しんについては、VR申請で英訳した接種記録と医師が証明したIRFを提出します。そのうえで、CDAが要件を満たすか確認します。
回数や接種時期が要件に合わない場合は却下されます。申請前に年齢別の必要回数を確認し、医師に相談してください。
赴任時に子どもがまだ接種年齢に達していない場合は?
CDAによると、接種の時期が来ていない子どもも申請は必要です。確認書が発行され、シンガポールで時期が来たら必要な接種を受けるよう案内されます。
麻しんを1回しか受けていない3歳の子どもはどうなりますか?
CDAのFAQでは、15か月以上の子どもは麻しん2回が必要としています。2回の有効な接種を終えていないと、申請は却下されるともしています。
日本出発前に2回目を受けるかどうかは、医師に相談してください。
駐在家族の子どもの接種費用に補助はありますか?
MOHのNCIS補助の対象はシンガポール国民と永住者で、外国籍の子どもは対象として書かれていません。料金は接種先のクリニックに確認し、会社の保険でカバーされるかも確認しておきましょう。
本帰国のとき、何を持って帰ればよいですか?
NIRの接種記録(Singpassで閲覧・印刷)、医師が発行した接種証明書、母子手帳を持ち帰るのがおすすめです。帰国後の追いつき接種は、住む自治体に相談してください。
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最終確認日: 2026-10-02 / 最新情報は公式ページよりご確認ください。


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