シンガポールに住む家族にとって、デング熱対策は身近なテーマです。
家庭でできることは比較的シンプルです。NEA(国家環境庁)は溜まり水をなくすことを呼びかけています。
この記事では、コンドやHDB(公営住宅)に住む日本人家族が今日からできる蚊対策、クラスター地図の見方、罰則、受診の目安までを1ページにまとめました。
NEA・感染症庁(CDA)・HealthHub・保健科学庁(HSA)といった公式情報をもとにしています。
この記事はこんな方に
- 💼働く側(駐在員ご本人)にとって違反すると罰則もある蚊対策のルールを、世帯主として把握できる
- 🏡帯同する側(ご家族・パートナー)にとって家の中と外出時にできる予防と、受診の目安がわかる
ざっくり言うと
- 🦟家庭の対策は週1回の「Mozzie Wipeout」
- 🗺️近所の状況はNEAのクラスター情報で
- 🧴外出時は虫よけで予防
デング対策の考え方:3つの柱で整理する

公式情報を読むと、家庭でできる対策は大きく次の3つに分けられます。どれか1つではなく、組み合わせて考えるのがポイントです。
1. 発生源をなくす(Mozzie Wipeout / B-L-O-C-K)
NEAによると、デングを媒介するヤブカ属の蚊(Aedes)は、家の中にあるようなきれいな溜まり水を好んで卵を産みます。20セント硬貨ほどの小さな水たまりでも発生しうるとされています。
そのため、NEAは「Mozzie Wipeout」を少なくとも週1回行うよう呼びかけています。
2. 刺されない(S-A-W、虫よけ、網戸など)
NEAは、すべての住民、特にクラスター地域に住む人に「Spray(スプレー)・Apply(塗る)・Wear(着る)」の3つの行動(S-A-W)を勧めています。
加えて、次のことなども挙げています。
- 網戸の設置
- 日中に寝るときは蚊帳を使うこと(Aedes の蚊は主に日中に刺すため)
- 手持ち式の電撃殺虫器の利用
3. 早めに気づいて受診する
デングには特効薬がなく、治療は症状を和らげる支持療法が中心です(HealthHub)。重症化すると命に関わることがあるため、疑わしい症状があれば早めに医師に相談することが大切です。
一覧表:家庭の場所別チェックポイント(NEAのチェック項目より)
NEAの家庭向けチラシ「Dengue Prevention at Home」とMozzie Wipeout(B-L-O-C-K)の内容を、コンド・HDBの間取りに当てはめて整理しました。
頻度はNEAの資料に書かれているものだけを記載しています。
| 場所 | チェックするもの | NEAが示す対応 | 頻度(NEA資料の記載) |
|---|---|---|---|
| ベランダ・室内の植木 | 植木鉢の受け皿 | 裏返して水を捨て、しっかりこする(B-L-O-C-Kの「L」) | 1日おき |
| ベランダ・室内の植木 | 鉢の土 | 固まった土をほぐす(「B」) | 1日おき |
| キッチン・リビング | 花瓶 | 水を替える(「C」)。内側をこすり、植物の根を流水で洗う | 水替えは1日おき |
| キッチン | 水切りかごの受け皿 | 溜まった水を捨てる | 記載なし(こまめに) |
| バスルーム・ベランダ・ヘルパー部屋 | バケツなどの水を溜める容器 | 使わないときは伏せて乾かし、ふちを拭く(「O」)。水を溜める容器にはふたをする | 記載なし |
| バスルーム・ベランダ | あまり使わない排水口(ガリートラップ) | ふたをする、防蚊弁(anti-mosquito valve)を付ける | 記載なし |
| ベランダ・屋外 | 排水溝(スカッパー) | 詰まりをなくしておく | 記載なし |
| ランデッド住宅・屋上 | 雨どい(ルーフガッター) | 詰まりを取り、Bti殺虫剤を入れる(「K」) | 月1回 |
| 庭・ベランダ | 水盤・小さな池などの水景 | 砂粒状の殺虫剤を入れる | 記載なし |
| 庭 | 排水路・木の穴 | 落ち葉や枝を取り除き、木の穴はふさぐ | 記載なし |
出典:NEA「Dengue Prevention at Home」(PDF)、NEA「Stop Dengue Now」
Mozzie Wipeout「B-L-O-C-K」の5ステップ
B-L-O-C-Kは、覚えやすい5つの行動です。NEAの2026年の全国デング予防キャンペーン開始時のスピーチでも紹介されました。
- Break up hardened soil:鉢植えの固まった土をほぐす
- Lift and empty flowerpot plates:植木鉢の受け皿を持ち上げて水を捨てる
- Overturn pails and wipe their rims:バケツを伏せ、ふちを拭く
- Change water in vases:花瓶の水を替える
- Keep roof gutters clear and place BTI insecticide:雨どいの詰まりを取り、BTI殺虫剤を入れる
数分でできる作業ですが、続けることが大切です。週末の家事ルーティンに組み込む、ヘルパーさんと担当を決める、といった形にすると忘れにくくなります。
コンド・HDBに住む日本人家族の確認ポイント
ベランダの植木鉢と受け皿
ベランダでハーブや観葉植物を育てている家庭は、受け皿も忘れずに確認しましょう。NEAの資料では、受け皿は1日おきに裏返して水を捨て、こすり洗いすることになっています。
受け皿そのものを使わない、水が溜まらない置き方にする、といった工夫も一案です。
バスルームとヘルパー部屋の排水口
コンドには、ゲスト用バスルームやヘルパー部屋のシャワーなど、普段あまり使わない水回りがあることがあります。NEAは、使用頻度の低い排水口(ガリートラップ)にはふたをするか防蚊弁を付けるよう案内しています。
長期の一時帰国の前には、バケツを伏せる、排水口にふたをするなど、出発前チェックに加えておくと安心です。
ベランダの排水溝と共用部分
ベランダの排水溝(スカッパー)は、NEAの資料でも詰まりをなくしておくよう書かれています。共用部分(プールデッキ、植栽、駐車場など)で気になる溜まり水を見つけた場合は、コンドの管理事務所に伝えるのが現実的です。
自分で判断が難しいときは、NEAのホットライン(6225 5632)に相談できます。
NEAの検査官が訪問してきたら
NEAの検査官は、住人の同意を得てから、住人の立ち会いのもとで室内を確認します。
検査官は、NEAの身分証(Authority Card)を提示して目的を説明することになっています。本人確認は、NEAのウェブサイト(www.nea.gov.sg/validate-officer)か電話(6225 5632)でできます。
発生源が見つかった場合、検査官は幼虫などを容器に採取して封をし、検査に回します。その場で罰金を請求されることはないとNEAは明記しています。
見つかった水を自分で捨てないよう求められている点も覚えておきましょう。
ヘルパーさんが1人で留守番をしている時間帯に訪問がある可能性もあるので、上の本人確認の方法を共有しておくとよいでしょう。ヘルパーさんとの家事分担についてはヘルパーを雇う方法(手続き・費用)も参考にしてください。
自宅で蚊が発生した場合の罰則

NEAの「Inspecting your homes and premises for mosquito habitats」ページによると、敷地内で蚊の発生が見つかった場合、罰則が科される可能性があります。
根拠は、Control of Vectors and Pesticides Act(CVPA、蚊などの害虫対策を定めた法律)です。罰則は、最高5,000ドルの罰金、または3ヶ月以下の禁錮、またはその両方です。
住居の場合は、Notice to Attend Court(出廷通知)の形で罰金が科されることがあります。執行措置が取られる場合は郵送で通知されます。
家庭向けの具体的な金額について、NEAは2020年7月15日から次の段階制を導入すると発表しています。
| 違反の回数 | 発生源が1か所 | 発生源が複数 |
|---|---|---|
| 初回 | 200ドル | 300ドル(法的通知を受けた後の発生も含む) |
| 2回目 | 300ドル | 400ドル(同上) |
| 3回目以降 | 裁判所での訴追(初めての有罪判決の場合、最高5,000ドルの罰金、3ヶ月以下の禁錮、またはその両方) | |
出典:NEAニュースリリース(2020年)、NEA「Inspecting your homes and premises」。
上の段階制はNEAが2020年に発表した内容です。現在の運用は、NEAの公式ページで確認してください。
賃貸のコンドでは、罰金を誰が負担するか、共用部分の管理は誰の責任かといった点が契約や管理規約によって変わることがあります。
気になる場合はエージェントや管理事務所に確認しましょう。契約全般はコンドの賃貸契約の流れと注意点にまとめています。
デングクラスター地図と警戒レベルの見方
クラスターとは
NEAによると、デングクラスターとは「感染が続いていて、集中的な対策が行われている地域」のことです。発症日が14日以内の2人以上の患者が、互いに150m以内にいる場合にクラスターとされます。
色分けの意味
| 色 | NEAの定義 | 家庭での目安 |
|---|---|---|
| 赤 | 高リスク地域(10例以上) | B-L-O-C-KとS-A-Wを徹底。症状に特に注意 |
| 黄 | 高リスク地域(10例未満) | 同上 |
| 緑 | 新規感染なし。今後21日間は監視中 | Mozzie Wipeoutを続ける |
「家庭での目安」の列は、NEAの一般的な呼びかけ(クラスター地域ではS-A-W、全員が週1回以上のMozzie Wipeout)を当てはめたものです。
地図の確認のしかた
- NEAのDengue Clustersページで、色別の一覧と地図を確認できます。一覧は、クラスター発生以降の累計患者数で並べ替えができます。
- NEAによると、地図のデータは毎日午前1時に更新されます。最新の情報を見るには、閲覧後にブラウザのキャッシュを消すよう案内されています。
- NEAの「Dengue Community Alert System」では、紫・赤・黄・緑の色分けされたバナーで地域の住民に注意を呼びかけています。自宅周辺のクラスターや、Aedes の蚊が多い地域の通知は、myENVアプリまたは go.gov.sg/dengue-high-risk で受け取れます。紫のバナーを含む各色の詳しい意味は、NEAのページの画像で確認してください。
住まい探しの段階で周辺の状況を見ておきたい場合も、同じページで確認できます。ただしクラスターは日々変わるので、住むエリアを決める一つの材料として見るのがよいでしょう。
エリア選びは駐在家族の住むエリアガイドも参考にしてください。
子どもの虫よけ:NEA登録製品の選び方と使い方
シンガポールで虫よけ(repellent)の登録を担当しているのは、HSAではなくNEAです。NEAの「Use of Mosquito Repellents」ページのポイントをまとめます。
選び方
- 購入時はNEAの登録マークを確認します。NEAに登録された製品は安全性と効果の審査を受けており、NEAの登録ロゴと登録番号が表示されています。
- NEA登録の肌用虫よけの有効成分は、DEET、ピカリジン(イカリジン)、IR3535のいずれかです。研究では、これらの成分は、シトロネラやユーカリなど植物由来の虫よけより効果が長続きする傾向があるとされています。
- シトロネラやユーカリなどの植物由来の虫よけは、NEAへの登録対象ではありません。
- 登録製品の一覧は、NEAのページからダウンロードできます。
子どもに使うときの注意(NEAの案内より)
- 製品ラベルの説明を必ず読み、そのとおりに使います。
- 子どもに自分で塗らせないようにします。
- 2歳未満の子どもには、できるだけ蚊帳や肌を覆う服など物理的な対策を使います。
- 日焼け止めを使う場合は、日焼け止めを先に塗り、そのあとに虫よけを塗ります。
- 顔に使うときは手に取ってから塗り、目と口を避けます。傷や炎症のある肌には塗りません。
- 汗、水遊び、服との摩擦で効果が落ちることがあるので、ラベルに従って塗り直します。
蚊取り線香や電気式の蚊よけ(空間用の虫よけ)を使う場合、NEAは次のような注意を挙げています。
- そばを離れない
- 換気をする
- 子どもの手の届かない場所に置く
日本から持ってきた虫よけを使う場合も、成分や対象年齢は日本の製品表示で確認してください。迷ったら小児科医や薬剤師に相談してください。
症状と受診の目安
主な症状(HealthHub)
HealthHubによると、デング熱は感染した蚊に刺されてから通常4〜7日で発症します。主な症状は次のとおりです。
- 突然の発熱(2〜7日続く)
- 目の奥の痛みを伴う強い頭痛
- 関節や筋肉の痛み
- 発疹
- 吐き気・嘔吐
- 鼻や歯ぐきからの出血、あざができやすい
重症型(デング出血熱・デングショック症候群)は命に関わることがあります。HealthHubは、デングかもしれないと思ったらすぐに医療機関を受診するよう案内しています。
人から人へ直接うつる病気ではありません。
受診のときに伝えたいこと
- いつから熱があるか、最高体温、ほかの症状
- 自宅や職場、学校の周りがクラスターかどうか(NEAの地図で確認できます)
- すでに飲んだ薬の名前
解熱剤は自己判断しない
CDAの医療従事者向けページでは、デングの対症療法として、発熱や痛みにパラセタモールが挙げられています(肝臓の病気がある人には慎重に使うとも記載)。
同じページには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は出血のリスクを高めるため避けるべきことも書かれています。
日本から持ってきた常備薬の中には、該当する成分を含むものもあります。熱が出たときは自己判断で薬を選ばず、医師や薬剤師に確認してください。
日本語で相談できる窓口
日本語で受診できるクリニックや小児科は、日本語が通じるクリニック・歯科・小児科ガイドにまとめています。夜間や休日に急に具合が悪くなったときの行き先も、元気なうちに家族で確認しておくと安心です。
ワクチンのシンガポールでの扱い

ワクチンについては、公式で確認できた範囲だけを記載します。この記事は接種をすすめるものではありません。
- HSA(保健科学庁)は2016年10月4日、Dengvaxiaを12〜45歳を対象に承認しました。12ヶ月間で3回(0・6・12ヶ月目)接種するワクチンで、HSAは、過去にデングにかかったことがない人には効果が期待しにくいと説明しています。
- HSAは2017年12月、過去に感染したことがない人への接種で重症デングのリスクが高まる可能性があるとして、そうした人への接種を勧めないよう医療従事者に注意を促しました。また、接種は国の予防接種プログラムには含まれていないとしています。
- CDAの医療従事者向けページ(2026年9月4日更新)によると、Dengvaxiaはシンガポールで唯一承認されたデングワクチンですが、製造元が世界的な需要の低さを理由に供給を終了するとしています(品質・安全性・有効性の問題ではないと説明)。2025年5月以降は、すでに3回の接種を始めた人だけが先着順で受けられる扱いです。
CDAは、3回の接種を終えるには2025年5月までに1回目を受けている必要があったとしています。個別の状況については、必ず医師に相談してください。
なお、HealthHubのデングのページ(2019年最終レビュー)にも、ワクチンの承認についての記載があります。ただし、最新の扱いはCDAのページで確認するのが確実です。
よくある質問
Q1. 高層階のコンドなら蚊は来ませんか?
公式に「何階以上なら安全」という情報は確認できませんでした。
NEAは、Aedes の蚊が家の中のきれいな溜まり水で発生すると説明しています。そのため、階数にかかわらず、受け皿や花瓶、排水口のチェックは続けるのが安心です。
Q2. 夜なら刺されませんか?
NEAは、Aedes の蚊は主に日中に刺すとして、日中に寝るときは蚊帳を使うよう案内しています。子どもの昼寝の時間帯は、網戸や蚊帳を活用しましょう。
夜に刺されないかどうかについては、NEAのFAQ(「Stop Dengue Now」ページ内)で確認してください。
Q3. 一時帰国中に留守にするときの注意は?
出発前に、次のことなど、上の表の項目を一通り済ませておきましょう。
- 植木鉢の受け皿を空にする
- バケツを伏せる
- 使わない排水口にふたをする
留守中に水が溜まりそうな場所があれば、ヘルパーさんや知人に確認を頼むのも一案です。一時帰国の時期の計画には2027年 祝日・学校休暇カレンダーも使えます。
Q4. 日本の虫よけスプレーは使えますか?
NEAは、シンガポールで買う場合にNEAの登録マークを確認するよう案内しています。日本から持ってきた製品について、NEAの登録の要否などの公式情報は確認できませんでした。
使う場合は日本の製品表示に従い、子どもの年齢に合うかは小児科医や薬剤師に相談してください。
Q5. 最新の感染者数はどこで見られますか?
この記事では速報は扱いません。NEAのDengue CasesページやDengue Clustersページで最新の状況を確認してください。
NEAは、日ごとの変動よりも週単位のデータのほうが実際の傾向を反映しやすいとしています。
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最終確認日: 2026-10-02 / 最新情報は公式ページよりご確認ください。


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